慢性腎臓病のステージ1について
血液検査で異常が認められず、見た目での症状も現れてこない慢性腎臓病のステージ1をそれではどのように診断していけばよいのでしょうか?
慢性腎臓病ステージ1の特徴を以下に示します。
慢性腎臓病ステージ1の病態
- 腎性のタンパク尿が持続する
- ほかの原因疾患がなく尿濃縮能が低下している
- 腎臓の触診あるいは画像診断で異常が認められる
- 腎臓の触診あるいは画像検査で異常がみられる
- 腎生検で異常がみられる
- クレアチニン値が1.6mg/dl以下であるか、徐々に上昇している
それぞれについて詳しく解説していきます。
1.腎性のタンパク尿が持続する
腎臓が悪くなってくると尿中にタンパクが漏れ出てきます。
慢性腎臓病になるとそのようなタンパク尿が持続的に出てくるようになります。
病院内の尿検査で行っている尿試験紙でタンパクの反応が陰性であれば、非タンパク尿として診断できますが、少しでも陽性になった場合は外部の検査センターにて「尿タンパク/クレアチニン比(UP/C)」という項目を測定する必要があります。
UP/Cによりタンパク尿なのかどうか診断できます。
2.ほかの原因疾患がなく尿濃縮能が低下している
尿濃縮能とは腎臓が尿を濃くする能力のことです。
腎臓が悪くなってくるとこの濃縮能が低下し、薄い尿を常にするようになってきます。
病院の尿検査の項目にある「尿比重」がこの濃縮能を調べるのに有効になります。
しかし、慢性腎不全ステージ1の猫ちゃんではまだ実際尿比重が低下していない子も多く存在します。
3.腎臓の触診あるいは画像検査で異常がみられる
腎臓が悪くなってくると腎臓の形や構造が変化してきます。
これに関してはX線検査で腎臓の大きさや形、位置などを、超音波検査で腎臓の内部構造を調べることができます。
4.腎生検で異常がみられる
腎生検とは、腎臓の組織を調べる検査です。
腎腫瘍や水腎症など特別なことがなければ検査することのリスクの方が高いため、慢性腎臓病ステージ1を見つけるために行う検査としては不適切なものになります。
クレアチニン値が1.6mg/dl以下であるが、徐々に上昇している
1.6mg/dl以上になってくると慢性腎臓病ステージ2に分類されます。
ただクレアチニンが1.6mg/dl以下の猫ちゃんのすべてが慢性腎臓病ステージ1であるとはもちろん言えません。
しかし、定期的に血液検査をしていく中でクレアチニン値が例えば、
0.8 ⇒ 1.0 ⇒ 1.2 ⇒ 1.5mg/dl
と徐々に上がっていると慢性腎臓病のステージ1の可能性は十分あります。
<参考文献>
「猫の慢性腎臓病について」小冊子 ノバルティスアニマルヘルス株式会社
CLINIC NOTE No.84 「猫の慢性腎臓病を早期診断するために」
犬と猫の治療ガイド2012「慢性腎臓病(CKD)」
HOME>猫のページ>猫の慢性腎臓病>慢性腎臓病ステージ1